何もない


のぞみ先生は担当していた部活でいじめがある事を知った。
だからだめだと加害者を叱った。
責めるわけもなく良くないと叱った。
数日後のぞみ先生はいなくなった。
馬鹿みたいな大人にバンされた。

いじめに気付き知らん顔する大人が褒め称えられていじめに気付き正そうとする大人が泥をかぶる。

こんな世界に何があると言うのだろう。

正義は必ず勝つ。愛は必ず勝つ。
そんなのは液晶画面のママゴトだ。現実逃避だ。

自分は正義でありたいと誰もが思う。だけど正義は悪だ。いつだって悪が勝つ。なら悪は正義だろう。

なんだっていいと思う。どうだって。
あらがうつもりなんてない。
私だって目の前に良くないことをしている人がいてそのうちの一人が自分より上だと見抜いたら耳を塞ぐし目も閉じるさ。

それでいいわけがないがそうするしかない。
『それじゃだめだ』と言う人ほど悪なのだから。それじゃだめならもう終わりにしなきゃ何も意味が無い。

みんなで仲良くみんなで協力。
馬鹿みたいな御託並べて息をしては息途絶え何を残した。

戦争のない国

とでも言いたいのだろうか。
戦争はなくていい。ない方がいい。
だけど今の時代は戦争をなくしたのではなくて戦争というものの形を変えたに過ぎない。

小学校のころから世界はこんなにも馬鹿なんだと知った。不登校になった私に元気良く微笑んだあの先生の目はちっとも笑ってなかった。だけど良い先生だった。

『あんな優しかったのに』
『なんであの人が』
『最低な人間だった』
『いつも暗かった』

本当なんてない。ひとりひとり意見があるんだ。嘘なんてない。何もない。善も悪もないんだ。この世界には何も。これからもずっと何もない。
愛という言葉にしがみついてるだけの哀れな世界。

それでいいじゃないか。
君は楽しんでるんだろ?
目の前で泣いてる人をただ可哀想だと言って先へと進むんだろう?
目の前で死んだ人をただ救えなくてごめんと泣いて自分を褒めたたえてるんだろ?
それでいいんだよ。

そうやって今まで生きてきたんだ僕ら。
君の世界を生きればいい。
君の正義、君の悪、君の愛を信じてればいいよ。傷つけ合えばいいよ。殺し合えよ気の行くままに。